悪心・嘔吐は消化管自体の疾患や他の疾患によって、嘔吐中枢が刺激されて起こりますが、色々な化学物質の刺激で起こる悪心・嘔吐は嘔吐中枢の傍にある化学受容帯で感知されて嘔吐中枢に刺激が伝わり起こります。
嘔吐中枢は、延髄内の迷走神経背側核付近にあり、消化管の障害は迷走神経を介して嘔吐中枢が刺激を受けて嘔吐が起こります。
嘔吐に際しては、嘔吐中枢と自律神経中枢が脳内に於いて近接しているので自律神経症状として、顔面蒼白、流涎、冷汗、失神感、脱力、血圧低下脈拍・呼吸数増加などが現れます。
しかし、髄膜炎、脳腫瘍、頭蓋内出血などで脳圧が亢進し、嘔吐中枢に酸素供給が欠乏して起こる嘔吐では、悪心の先行が無く噴射状態に嘔吐するのが特徴です。
また、精神神経系の異常で悪心・嘔吐がみられる事もあります。
嘔吐が見られた場合には発病状況、経過、随伴症状(腹痛・発熱・黄疸・排便停止など)や、嘔吐物の色・臭気・食物残渣・血液混入にも注意が必要となる。
(1)意識障害、頭痛、眼痛、めまい、胸痛、発熱などの随伴症状は脳、 眼、内耳、心臓の障害が疑われる
(2)女性の嘔吐では、妊娠、つわり、妊娠中毒症の可能性
(3)食後の経過で注意 ①食後直ちに嘔吐:急性胃炎など ②食後1~4時間:胃潰瘍、十二指腸潰瘍など ③食後12~48時間以上で周期的:幽門狭窄など ④食事に関係なく:中毒症状、頭蓋内圧亢進など
悪心・嘔吐の鍼灸治療では、主に消化器系の機能回復を図る目的として、上腹部、背部の反応点や筋緊張部に対して施鍼や施灸を行うが、神経性嘔吐では、精神安定をも目的とした選穴が必要となる。
<治療穴>
脾兪、巨闕、中脘、内関、胆兪、膻中、膈兪、日月、腎兪、陽陵泉、 下脘、足三里、肝兪
悪心とは → 吐き気 嘔吐とは → 有声無物(乾嘔) → 有物無声
嘔吐の分類
実証:外邪、食滞、肝鬱、痰飲
虚証:脾胃虚弱、胃陰虚
嘔吐弁証
実嘔:発症が急、病程が短い、嘔吐量が多く酸腐臭が強い
虚嘔:発症が緩慢、病程が長い、嘔吐は無力で量は少ない、酸腐臭は弱