月経とは思春期の内分泌的成熟に伴う第2次性徴の初潮に始まり、更年期の生殖機能失調からの閉経に至るまで卵巣周期に伴う子宮内膜が一定の周期で剥がれ落ち同時に毛細血管が破れて出血が起きる一連の現象を言います。
一定の日数の出血が継続して、子宮が自然に収縮し、毛細血管も修復すると出血も止まります。
周期日数:25~35日(28~30が最多) 持続日数:3~7日 経 血 量:20~140ml(平均60ml)
月経前には浮腫やイライラの随伴症状が出現したり、月経時には下腹部痛や腰痛が出現しやすく、半数以上の女性にみられます。
月経は10代中盤に発現する第二次性徴で間脳・脳下垂体前葉・卵巣系が調整されて排卵が起こり、受精され着床の妊娠が成立しなければ、子宮内膜が剥がれ消退出血の月経が起こります。
体内で起きているホルモンの変化は、基礎体温(BBT)で知ることができるので、毎日の測定で評価が出来ます。 卵胞期では基礎体温が比較的に低く(低温相)で黄体期に入るとプロゲステステロンの影響で基礎体温は上昇(高温相)します。
女性ホルモンが分泌されるホルモンには、まず視床下部から下垂体前葉に働きかける性腺刺激ホルモン放出ホルモン[ゴナドロビン放出ホルモン(GnRH)]が放出され、それにより下垂体前葉から性腺刺激ホルモン[ゴナドロビン]が放出され卵巣に働きかけますが、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の二種類があります。
卵胞刺激ホルモンの作用で、卵胞が成熟してエストロゲンをが分泌されて子宮内膜の増殖と肥厚がおこり、卵子の放出がおこります。
卵子を放出した後の卵胞は黄体となり、エストロゲンとプロゲステロンを分泌して、妊娠が成立したならば、黄体から両方のホルモンが分泌され続き、妊娠が成立さなければ黄体は萎縮してエストロゲンとプロゲステロンの分泌が低下して子宮内膜が剥がれて月経がおこります。
血液中のエストロゲンの濃度が低下すると脳の視床下部からは性腺刺激ホルモン放出ホルモンが放出されて、月経周期の初期に戻ります。
月経異常には、周期の異常、月経日数の異常、月経量の異常、随伴症状の異常があります。
◎原発発性無月経:18歳になっても初潮がないもの
◎続発性無月経:月経不順で3ヶ月以上月経がないもの(ホルモン分泌 の不安定が考えられる)
◎栄養不足性乱経:急激なダイエットや拒食症で急激な体重減少がある と、視床下部の栄養不良からホルモン分泌の異常を 来す
◎頻発月経:一ヶ月に2度以上の月経がある
◎月経周期が長い:月経の周期が25日未満や39日以上では無排卵の 可能性がある
◎過多月経:凝血が多い場合には考えられ、子宮筋腫や子宮内膜症が原 因になっている場合がある
◎過少月経:無排卵が原因の場合が多い
◎無排卵性周期:思春期や更年期で排卵が起こっていないにも拘わらず 月経の様な出血がある場合をいいます
月経前後にみられる内分泌的変化による種々の自覚症状を月経随伴症状といいます
◎月経困難症:月経時の下腹部痛や腰痛などの疼痛を主体とする症候群 で月経痛ともよばれていて、月経時期を過ぎれば自然に症状は収まる 器質性~・子宮内膜症(多くが骨盤内腔にも子宮内膜が存在し、月経 時以外でも痛む事や、月経量の多さと塊の排出、ダグラ ス窩の癒着などがある) ・子宮筋腫(子宮の外に飛び出た様な漿膜下筋腫、子宮の筋 層内に出来る筋層内筋腫、子宮内膜を圧迫する粘膜下筋 腫に分けられる) ・その他骨盤内臓器の炎症、腫瘍などがある
機能性~精神不安定、神経症的傾向、疼痛閾値が低い、などがある
◎月経前緊張症:原因は不明だが自律神経系の障害や精神的因子も考え られ、月経前の3日~10日前から始まり月経開始す ると消失するのが特徴 症状は多岐に及び、下腹部の不快感・膨満感・疼痛、腰痛、怒りっぽい、イライラ感、頭痛、めまい、動悸、吐き気・嘔吐、胃痛、食欲不振、便秘、全身倦怠、浮腫、不眠などが現れます
月経異常の鍼灸治療は自律神経系、内分泌系の機能を調節し、諸症状を改善・予防をする
下腹部、腰部、仙骨部などの圧痛や硬結などがみられる経穴や反応点に施鍼や施灸を行う
<治療穴>
背腹部:関元、帯脈、胞肓
腰部:腎兪、次髎、関元兪
上下肢:三陰交、曲池、行間、照海
東洋医学で月経は「天葵」「臓腑」「気血」「経絡」の働きが協調し「女子胞」に作用して形成されると考えられている
天葵:腎精が一定量溜まると、人体内で自然に生産される液体物質で、 性器官の発育と成熟を促し、生殖能力を備える働きを持つ
臓腑:五臓(肝・心・脾・肺・腎)と六腑(胆・小腸・三焦・胃・大腸・ 膀胱)のうちで、腎・肝・脾(胃)との不快関係
気血:代謝の中で余剰になった気血が月経の主要成分であり、気血は 臓腑の働きで化成される
経絡:経絡は臓腑と他の組織や器官を連絡しておのおのの働きを結び つけて気血を全身に万遍と供給して栄養をしている
女子胞:女子胞は奇恒の府で、その形態は中空の性器官で腑に似てい るが、働きは精気を蔵する臓(腎)に似ていて、臓と腑の働きを 兼ね備えた特殊な器官
東洋医学では月経周期の異常を主体として病態を把握し、この月経周期の異常を「月経不調」といい、4種に分類されます。
◎経早(月経先期):月経周期が通常周期よりも7日以上早く、甚だしい 場合は一月に2度の月経がある
◎経遅(月経後期):月経周期が通常周期よりも7日以上遅れ、甚だしい 場合には40日~50日に一度の月経周期となる
◎経乱(前後不定期):月経が定期的な周期で訪れずに、早くなったり遅 くなったりの一定間隔ではない
◎閉経:月経が3ヶ月以上起こらない
18歳を過ぎても初潮がこない場合や、今まで月経があったにも拘わらず連続して3ヶ月以上月経が中断している場合を「閉経」という。
日本では更年期以降にい月経が停止した場合に閉経と言うが、東洋医学では「絶経」と呼び、病的な月経停止と区別される。