不眠症

不眠症の概要

正常な睡眠

睡眠はレム睡眠(身体の睡眠)ノンレム睡眠(脳の睡眠)に分けられていて、通常90分を1サイクルとして、一晩に3~5回繰り返されています。

レム睡眠(身体の睡眠)

 急速な眼球運動を伴い、抗重力筋の緊張が消失して、身体が無  動化するので身体の睡眠と言われる。妨害されると、身体の不  全感や集中力が欠けることから、重要とされる。睡眠の後半に  多く現れ全体の25%とされる。夢を見ている事が多く、陰茎  の勃起もこの時に起こる。

ノンレム睡眠(脳の睡眠)

 エネルギー保存の役割を担うとされ、脳の睡眠と言われている。 4段階に分けられている。                  ・1段階入眠時のウトウト状態で、外界に僅かな刺激でも目   覚め、眠っている感覚が無い状態。全睡眠の約5%。     ・2段階入眠に引き継ぐ段階で、まだ僅かな刺激ででも目覚   め、全睡眠の約50%とされる。              ・3段階中程度のやや深い眠りで、寝息を立てて少しの刺激   では目覚めない。3と4の段階が全睡眠の20%とされる。  ・4段階完全に深い熟睡状態で、体動も少なく15~20分   間も全く動かない事がある。この眠りは前半期に多い。 

睡眠障害と不眠症

睡眠時間の平均は成人で平均7~8時間ととされていますが、それ以下が不眠だとは定義されてはいません。しかし、不眠を訴える方にも、二通りの人がいます。

 真の不眠 :実全不眠で実際に覚醒して不眠を訴える         偽りの不眠:実際には睡眠しているが、寝ていないと感じている人で、       神経症性不眠に多い

睡眠障害の形態  4種類に分類される

 入眠困難型睡眠障害  

 通常は30分以内に睡眠するとされ  ていますが、寝付きが悪く、甚だしい  時には一晩中一睡も出来ない事もあ  り、神経症的傾向に多く、悪夢を伴  うと睡眠に対する恐怖が生じたり、  睡眠に過度の期待を抱くことがある。

 中途覚醒型睡眠障害

 眠りが浅く、僅かな物音で目覚め、  睡眠持続が悪く、一晩に何度も目覚  めてしまう。ノンレム睡眠の3.4  が乏しい状態。脳器質傷害・鬱病等  の患者にみられ、老齢性鬱でも発症  する。

 身体的不快型(疼痛など)睡眠障害 

 内科、外科的な疾患に伴って、不快  感から睡眠が浅くなり、覚醒する。  糖尿病性掻痒(レストレスレッグス症  候群)などでも傷害が起こる

 早朝覚醒型睡眠障害 

 寝付きは良いが早朝に目覚めて、眠  りたいと思いつつ眠られない。    老人性不眠などで、朝早くから活動  して家人に迷惑がられる。

睡眠過剰症 ナルコレプシー(居眠り病)

不眠症とは逆の現象を起こす過眠症

急に起こる睡眠ー覚醒リズムの乱れから、眠気・居眠り・居眠り発作・脱力等がおこり、長年月において毎日続く傾眠性の疾患で、精神的な葛藤や喪失体験などに対する反応として起こるとされています。

上記のイラストは医療情報科学研究所発行「REVIEW BOOK」より

不眠症としての分類

  • 1
    一過性不眠症(状況性)  
    精神的要因が現れた結果を示すもので、情緒的覚醒状態を示し、不眠となる。不眠となる誘因の終了後3週間以内とされる。
    楽しい興奮を生じる時:旅行前夜、表彰式前夜など
    不安や恐怖等が伴う時:試験・転職・転居など
  • 2
    持続性不眠症
    原因となる精神的要素が最近の物事と関連せず、誘因となる自体の解決後3週間異常すぎても不眠が持続されるもので、多くの不眠症がこのタイプに属している。
    慢性化した緊張状態で落ち着かない、予期できない不安感、過度  の活動状況、などに自覚せずに体質ととらえている。
    ・寝室の明かり・家具の配置・臭い・就寝前の一連儀式など外因性  の因子により不眠を誘発
    眠るための過度なる努力によっての悪循環から不眠へ誘発
  • 3
    老年者の不眠
    老年型として加齢よる自然変化の睡眠形態の変化で、入眠困難、熟睡の傷害、早朝覚醒を訴える
    基となる諸疾患に脳動脈硬化、高血圧、心肺傷害があげられている。
    入眠までの時間が、若年者は約12分、70代で約15分、77以上で約40分以とされ、入眠までの時間が長く、また熟眠時間も少なくなっている。

誘因と原因

不眠症の誘因や原因は生活習慣、環境、服薬する薬剤、身体疾患、精神疾患などの多岐にわたっている。

生理性不眠症・原発性不眠症

日本の人口で成人の21.4%の人は不眠の訴えを持っています。  性別では女性に多く20~30代に始まり、40~50代がピークとなる。睡眠のこだわりや、睡眠に対する誤った知識誤った睡眠習慣不眠による影響の誤った知識などで、不眠への恐怖や睡眠への過剰な努力が更に緊張感を生み出します。

  • 1
    薬剤性不眠症:常用の薬剤による副作用で不眠
     ・抗パーキンソン病薬:レボドバ、セレギニン、ペルゴリド、                    アマンタジン
     ・降圧剤:プロプラノール、ニフェジピン
     ・ステロイド剤:プレドニゾロン
     ・気管支拡張薬:テオフィリン
     ・その他:インターフェロン
  • 2
    身体疾患による不眠症
     ・循環器系疾患:心不全など
     ・呼吸器系疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息など
     ・消化器系疾患:逆流性食道炎、胸やけなど
     ・泌尿器系疾患:腎障害(透析)など
     ・疼痛を伴う疾患
     ・ホルモン障害:更年期疾患
     ・精神疾患:うつ、躁病、統合失調症など
  • 3
    逆説性不眠症
      
    客観的には睡眠が取れているが、主観的に不眠と認識し訴える
  • 4
    生活習慣で不眠症
     不規則な睡眠時間、入眠前のコヒーや紅茶(カフェイン摂取)、   多量の飲酒などによる

治療法

薬物治療:入眠障害には超短時間型と短時間型を選択          中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害には中間型や長時間      型を選択

ベンゾジアゼピン受容体作動薬を主に処方される。

超短時間作用型:ゾピクロン、ゾルピデム、トリアゾラム、           エスゾピクロン

短時間作用型:ブロチゾラム、ロルメタゾラム、               塩酸リルマザホン        

中時間作用型:フルニトラゼパム、ニトラゼパム、ニメタゼパム        エスタゾラム、スポレキサント

長時間作用型:クアゼパム、フルセゼパム、ハロキサゾラム  

非薬物治療:睡眠障害は自律神経失調症の症状の一つと考えら   れ、精神療法、認知行動療法、漢方薬などの東洋医学がある

  • 1
    心理療法

    支持的アプローチ:一般心理療法、カウンセリング
    行動療法的アプローチ:行動療法、認知行動療法
    精神分析的アプローチ:精神分析療法
    自律的アプローチ:自立訓練療法、筋弛緩法、絶食療法
    東洋医学的アプローチ:森田療法、内観法
  • 2
    漢方薬

    黄連解毒湯:のぼせ気味でイラつきが多くての不眠
    甘草瀉心湯:眠たいけれど眠られず不安感があって食欲も無い加味帰脾湯:胃腸が弱く動悸・健忘・神経過敏の不眠

    酸棗仁湯:心身疲労からの不眠
    柴胡加竜骨牡蛎湯:一見して丈夫そうだが神経過敏での不眠
    桂枝加芍薬湯:下痢と腹痛で不眠(過敏性腸症候群)
    猪苓湯:胃腸が弱い人等の夢精や遺精、尿道の不快感や林痛で不眠
  • 3
    オステオパシイー 不眠症は自律神経失調症の症状の一つとされているので、その治療法に準じ、特に頭蓋骨と仙骨の連絡を良くして、脳脊髄液の循環を改善する目的を持って行う

    頭蓋骨アーチホールド:頭蓋骨呼吸の安定化
    仙骨ホールド:仙骨可動性評価で脳脊髄液ポンプの安定化
    脊髄硬膜解放:脳脊髄液の循環を改善
    蝶形骨調整:トルコ鞍を安定化し脳下垂体の制限解除

共通の治療穴

不眠症の鍼治療で、一過性の不眠に対しては非常に効果が期待できるが、持続性不眠では効果にばらつきがあり、老年性不眠では持続性不眠に他の疾患に伴う症候性不眠が伴うために長期の治療を要する。

<治療穴>太陽、完骨、肺兪、心兪、中脘、内関、蕨陰兪、失眠、安眠

東洋医学の鍼灸の治療

洋医学では不眠の事を「不寐」「失眠」と呼び、次の三通りに分けられる

◎実症としては、痰熱・肝熱が心神に影響を及ぼして不眠となる

◎虚証としては、心神が養われないので不眠となる

◎虚実挟雑として、腎陰が不足し心火を鎮められなくて不眠となる

  • 1
    痰熱 (実症)
    飲食の不節で脾胃が虚弱となり、運化が失調して痰湿が生成され、鬱すると化火して痰火を発生し、心に影響を及ぼし不眠となる。
    <症状>
    眠りが浅い、多夢、よく目覚める、胸苦しい、胃脘部のつかえ、目眩愛気(ゲップ)舌質紅、舌苔黄、脈滑数
    <治療穴>
    中脘、豊隆、内関、厲兌、隠白
  • 2
    肝火 (実症)
    抑鬱・激怒などで情志を損傷し、条達を失調して気鬱となり、肝鬱化火して心神に影響を及ぼすし不眠となる。
    <症状>
    入眠困難、心煩、イライラ、怒りっぽい、目赤、耳鳴、胸肋痛、口苦、頭痛、煩躁、舌質紅、舌苔薄黄、脈弦数
    <治療穴>
    肝兪、行間、足竅陰、風池、神門
  • 3
    心脾両虚 (虚証)
    思慮の過度や心労、過労などで、心を損傷し、陰血が消耗されて心神を栄養出来なくて不眠となる。
    <症状>
    入眠困難多夢目が覚めやすい、心悸、健忘、汗が出やすい、精神疲労、倦怠感、舌質淡、脈細弱
    <治療穴>
    脾兪、心兪、神門、三陰交
  • 4
    心腎不交 (虚実挟雑)
    元々の陰虚体質、長期病床、心神過労、房事過多などで、腎陰が損傷され、心火を鎮める事が困難となり、心神に影響を及ぼして不眠
    <症状>
    不眠、心煩、少し眠ると目覚める五神煩熱寝汗、口や咽頭の乾き、目眩、耳鳴、健忘、腰膝のだるさ舌質紅舌苔少(乾燥)、
    脈細数
    <治療穴>
    大陵、太谿、神門、太衝

現代医学、東洋医学と共通の注意事項

不眠は生活上で時間的や経済的にゆとりある人に多くみられる事から、生活条件の改善と日常の生活習慣お改善を試みる事がひつようとなる。

(1)就寝前に興奮状態を引き起こす、読書・テレビ・会話を行わない。

(2)夜には興奮を起こす緑茶・コーヒー・紅茶をとらない。

(3)眠たくなってから床につく習慣とする。

(4)床についてから、飲食は慎む。

(5)寝る時間が遅くても、起床時間は一定時間にする。

(6)寝られなくとも、床の中には8時間以上はいないで、起きる。

(7)眠るために過度に努力せず、目をつむり静かに横たわる。

(8)雑念がわくときは、考えの続きを打ち切る。

(9)雑音が気になる時は耳栓を使用する。

(10)同室者のイビキには、自分の呼吸を合わせる。

(11)昼寝はしない。

以上の項目の遂行が不眠解消へと繋がります。

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