腰痛は人類が四足歩行から二足歩行へと進化を遂げたときからの宿命で、半数以上の人が経験をする避けられない疾患です
何故ならば、2本の足の上に、一枚の骨盤が乗り、その上に椎骨が1本縦に立っている不安定な状態のところに、重い頭がさらに乗っかっていますので、骨盤に近い4番・5番腰椎あたりに付加重量がのし掛かるためと言われています
腰痛の原因には、まずは大きく分けて「骨格や筋の異常から」「神経伝達系の異常から」「疾病からの症候性から」「精神科的疾患から」等が考えられます
骨格・筋異常:仙椎関節、椎間関節、仙腸関節、脊柱起立筋、腸腰筋等の打撲・骨折・捻挫・側湾
神経系異常:中枢神経、神経根、末梢神経等の外傷・炎症・腫瘍・圧迫
症候性異常:泌尿器疾患、婦人科疾患、消化器疾患、からの二次性腰痛
精神科から:鬱、ノイローゼ等の心因性からの腰痛
腎兪・志室付近の疼痛箇所をⅠ型、大腸兪・関元兪付近の疼痛箇所をⅡ型
合併した疼痛箇所はⅢ型と分類して基本治療を行う
医道の日本社 最新鍼灸治療学(医学博士 木下晴都著書)より
主な坐骨神経痛を鑑別テスト
1.下肢伸展挙上テスト(SLR)
仰臥位で膝を伸展したまま下肢をゆっくり挙上し、疼痛や痺れの発現を検査 (70°以上挙上で発現は陽性)
2.ブラガード・サイン(SLR増強法)
SLRテストで陽性になった位置から、膝を伸展したまま足関節を背屈し、疼 痛や痺れが増強すれば陽性
3.ラセーグ兆候(坐骨神経伸展テスト)
仰臥位で股関節と膝関節90°屈曲位で他動的に膝関節を伸展し、下肢後面に 疼痛と伸展不能で陽性
4.ボンネト・テスト(坐骨神経伸展増強テスト) SLRテストで疼痛を誘発した後に、下肢を少し上げて股関節を内転さ せ、下肢に疼痛が出現すれば陽性
坐骨神経痛の圧痛点
骨盤を形成している腸骨・坐骨・仙骨を強く連結させる仙棘靭帯で坐骨 孔が上の大坐骨孔と下の小坐骨孔に分けられ、大坐骨孔を梨状筋が上孔 と下孔に分ける、その下の孔から坐骨神経が通る箇所に一つ、大腿部後 面の坐骨神経が通る箇所に一つ、坐骨神経から分かれる脛骨神経が通る 箇所に一つと、圧痛が大きく現れる点がある
気海兪・志室・下志室・復溜、ときには外胞肓・衝門・気衝・帯脈をも取穴する
回旋困難を訴える場合は、陽明経病症として、足三里・上巨虚・下巨虚も用いる
腰殿部の刺鍼は内下方に向けて斜刺で約20mm刺入、下肢は直刺で約10mm刺入し、虚証体質には軽い刺激の手技を、実症体質にはやや強めの手技を加える
衝門・気衝・帯脈に圧痛があれば、軽い単刺を加える
関元兪・腰宜・上胞肓・外丘、ときには上髎・腰陽関を加え、手技はⅠ型と同様に行い、上髎と腰陽関は圧痛がある場合に用いる
腰陽関に圧痛がなく、その一椎下のL5とS1の間に圧痛がある場合には、十七椎を用いる
腰の屈伸困難を訴える場合は小陽経病症として、外丘を加えて、腰部の過緊張を訴える腰痛は蕨陰経病症として、蠡溝を用いる
気海兪・関元兪・委中、ときには志室・腰宜
このタイプはしばしば老人に現れ、手技は軽度の刺激として、気海兪・関元兪に圧痛が顕著な時には灸を選ぶ
項背部から腰仙部の広範囲に痛みを訴える腰痛は太陽経病症として委中穴を選択し刺鍼を行い、発熱と突っ張った痛みを訴える腰痛は太陰経病症として地機穴を選択して刺鍼を行う
坐骨神経痛で自発痛や圧痛部が何処に出現するかに於いて、大きく四つのタイプに分類が出来る (医道の日本社 最新鍼灸治療学 木下晴都著書より)
(1)後側型 下の写真で背部から殿部・ふくらはぎに自発痛や圧痛点がある
(2)前側型 後側型と同時に下腿前面に自発痛や圧痛がある
(3)外側型 後側型と同時に下腿外面に自発痛や圧痛がある
(4)総合型 総ての側に時発痛と圧痛が出現する
坐骨神経痛治療の傍神経刺 患側の大腸兪・殿圧
大腸兪は腰神経が大腰筋の下を通る(深部)が、この筋の過緊張と引きつりから腰神経の圧迫を取り除く目的に用いる
殿圧は坐骨神経の上を梨状筋が被っていて、筋緊張から坐骨神経と下殿動脈を圧迫するので疼痛を発症すると考え、この筋緊張を取り除く目的で用いる
傍神経刺以外の置鍼する治療点
腎兪・上胞肓・殷門・外承筋・足三里 健側大腸兪
患側を上にし股関節と膝関節を少々屈曲姿勢で、腰殿部は1.5~2cm、下肢は1~1.5cm刺鍼して15分間の置鍼
健側大腸兪は単刺とする
伏臥位か、体位が取れない場合には側臥位(患側を上)で行う
基本治療穴から治療穴を選択して、必要に応じて、奇穴の殿圧、十七椎、痞根、を加えて刺鍼を行う。
伏臥位または体位が取れない場合には側臥位で、圧痛点周辺を囲む様に斜刺で十五分間置鍼し、後に圧痛点の反体側に深刺で手技を加える。
その後に、疼痛部位に灸も可。
伏臥位又は患側を上にした側臥位で、基本的治療穴から選択し脊椎方向に斜刺を行い、
患側圧痛部に直刺、圧痛点周辺を囲んで斜刺
十五分間置鍼し、灸も可
腰痛は「腰脊痛」とも言われ、腰部の疼痛を主症とする病症であり、腰部の一側起こる場合と、両側に起こる場合がある
腰は「腎の府」と言われており、足小陰腎経の経脈の循行は「脊を貫き腎に属している」ので、本病症と腎とは密接な関係にある
本病症には急性の病症と、慢性の病症があり、外邪や外傷による急性腰痛は実証が多く、経過が長く反復して起こる慢性腰痛は腎虚による事が多い
腰は腎の精気が注いでいる処であり、腎と膀胱とは互いに表裏の関係
腰は足太陽膀胱経が走行して、任脈・督脈・衝脈・帯脈が分布している処でもある
内傷性の腰痛は腎虚労損の場合が多く、外傷性の腰痛は風・寒・湿の外邪による場合が多い
また、捻挫などでは外傷による経脈の循行が悪くなり腰痛を引き起こす場合もある
湿気の多い所に居住したり、雨に当たった後や、汗をかいて後に風に当たったりすると寒湿の邪を受けやすい
寒邪は凝滞性や収引性があり、湿邪には粘滞性があり、この寒邪と湿邪が結びついて、腰部の経絡に影響を及ぼして気が阻滞して腰痛が起こる
足の太陽膀胱系型(脛骨神経) 下腿後部に放散痛
治療穴 腎兪、大腸兪、環跳、委中、崑崙、腰陽関、次髎を用いて 温通経絡・散寒止痛を行う
足の小陽胆経型(腓骨神経) 下腿外側に放散痛
治療穴 大腸兪、環跳、風市、陽陵泉、飛陽、腰眼、侠脊穴を用い て温通経絡・散寒止痛を行う
房事過多や久病などで身体が弱ったり、老化により腎虚となり腎精が不足すると経脈を滋養出来なくなり腰痛を発症する
治療穴 腎兪、委中、次髎、大腸兪、環跳で補益腎精・通路止痛
陰虚~太谿、志室、照海、にも刺鍼
陽虚~命門、腰眼、復溜、にも刺鍼
捻挫や打撲などの外傷により腰部の経絡・経筋を損傷して瘀血が擬滞して腰痛が発症する
治療穴 腎兪、委中、環跳、大腸兪、腰陽関、阿是穴で行気活血・舒筋 通路をはかる
予備穴に支溝、陽陵泉、次髎、侠脊穴
立位視線テストを行なって、構造からの体性内臓反射が起こっているのか、内臓からの内臓体性反射が起こっているのか、又は自律神経のバランス不調から起こっている症状か、三種類の何処から症状が起こっているかを特定していく事が必要になります。
構造の場合には椎骨からか、又は仙骨からかの特定をしてから、治療法を選定します。
内臓の場合には内臓腔テストを行ない目的箇所を絞り込んでいきます。
中枢神経系の場合には仙骨と仙骨の動きの確認して、脳脊髄液の循環作用の確認が必要になります。
内臓腹腔検査で頸部、胸部、腹部、骨盤の各腹腔検査を行う
頭蓋仙骨の機能検査を行って、それぞれの機能制限が認められる箇所の改善法を行う