腰痛

腰痛は人類が四足歩行から二足歩行へと進化を遂げたときからの宿命で、半数以上の人が経験をする避けられない疾患です

何故ならば、2本の足の上に、一枚の骨盤が乗り、その上に椎骨が1本縦に立っている不安定な状態のところに、重い頭がさらに乗っかっていますので、骨盤に近い4番・5番腰椎あたりに付加重量がのし掛かるためと言われています 

 

腰痛の原因

腰痛の原因には、まずは大きく分けて「骨格や筋の異常から」「神経伝達系の異常から」「疾病からの症候性から」「精神科的疾患から」等が考えられます

 骨格・筋異常:仙椎関節、椎間関節、仙腸関節、脊柱起立筋、腸腰筋等の打撲・骨折・捻挫・側湾

 神経系異常:中枢神経、神経根、末梢神経等の外傷・炎症・腫瘍・圧迫

 症候性異常:泌尿器疾患、婦人科疾患、消化器疾患、からの二次性腰痛

 精神科から:鬱、ノイローゼ等の心因性からの腰痛

腰部と殿部の痛みを起こす主な疾患

  • 1
    椎間板に要因がある場合
     椎間板の変性、椎間板ヘルニア
  • 2
    腰椎構成に要因がある場合
     脊椎分離症、脊椎すべり症、脊椎管狭窄症、側弯症
  • 脊椎の老化に要因がある場合
     変形性脊椎症、脊椎骨粗鬆症、椎間関節症
  • 靭帯に要因がある場合
     後縦靭帯骨化症
  • 外傷などに要因がある場合
     腰椎捻挫、仙腸関節捻挫、打撲、圧迫骨折、横突起骨折、靭帯断裂
  • 腫瘍に要因があるもの
     脊髄腫瘍、脊椎腫瘍、各臓器の悪性腫瘍転移
  • 炎症に要因がある場合
     脊椎カリエス、可能性脊椎炎、硬直性脊椎炎
  • 心因性に要因がある場合
     心身症、ヒステリー、神経症、抑鬱症、自律神経失調症
  • 全身性の疾患に要因がある場合
     リュウマチ、糖尿病、感染性疾患、熱性疾患
  • 10
    習慣的に要因がある場合
     習慣性不良姿勢、
  • 11
    内臓疾患に要因がある場合
     消化器系疾患、泌尿器系疾患、婦人科系疾患
  • 関連痛
     肺疾患による関連痛で胸神経6~7番のデルマトームでは腰背部  にも痛みが出現する

痛みの種類と随伴症状による症状分類

  • 1
    主に極限的な痛みのみで他に症状がない疾患
     椎間板症、椎間関節症、脊椎分離症、硬直性脊髄炎、急性脊髄炎、 筋筋膜炎
  • 2
    安静時の疼痛と叩打痛
     各種炎症
  • 3
    強い自発痛、夜間痛、叩打痛
     各種の腫瘍
  • 4
    殿部・大腿部に重苦しい痛み
     腰痛椎間板の変性、腰椎椎間関節疾患
  • 5
    夕方になると腰痛が起こる
     退行性変性疾患、同一作業性
  • 疼痛の他に、しびれをを伴う
     腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊椎管狭窄症、脊椎すべり症、     脊椎転移性腫瘍
  • 訴え以外の他覚的所見が見当たらない
     心因性腰痛
  • 脊椎の前湾(生理的湾曲)の消失が痛みと共に観られる
     椎間板ヘルニア、椎間板症、変形性脊椎症、椎間関節症、筋筋膜炎
  • 脊椎の前湾(生理的湾曲)の増強し、痛みと共に観られる
     脊椎すべり症、
  • 10
    側湾が痛みと共に観られる
     椎間板ヘルニア、筋筋膜症、側湾症
  • 11
    痛みと共に、前屈の制限がある
     椎間板ヘルニア、筋筋膜炎症
  • 12
    痛みと共に、後屈の制限がある
     椎間関節症、脊椎分離症、変形性脊椎症
  • 13
    痛みと共に、前屈も後屈も制限がある
     硬直性脊椎炎、炎症性疾患、脊椎腫瘍、脊髄腫瘍

逆引き疾病症状

  • 1
    椎間板ヘルニア
     椎間軟骨の髄核が繊維輪を破って脱出して、神経根を圧迫して痛  みが生じる
     腰椎の生理的弯曲である前弯が減少し、疼痛が強い場合には脊柱の
     側弯が出現する
     腰痛、下肢痛、下肢のしびれ、下肢筋力低下、患側屈曲制限、 
     腰椎前弯消失、ラセーグ兆候+、SLRテスト+、坐骨神経痛に
     移行もある 
  • 2
    変形性脊椎症
     椎間軟骨の退行変性を主体とした消耗性疾患で、加齢と共に脊椎の
     水分が減少し変性が出現、靭帯付着部の骨新生によって骨棘・骨堤
     を形成して腰痛を生む

     起床時に痛み、動作開始時や長時間の同一姿勢維持で増強する腰痛
     だが、適度の運動では痛みが軽減する特徴をもつ
     痛みより腰部の張り、重くだるい、鈍痛、腰椎前弯の消失、
     始動時痛あるが安静時には減少、下肢知覚・筋力低下、運動制限
  • 3
    腰部椎間関節症
     椎間板の変性により関節の異常可動が生じて、関節嚢や靭帯に肥厚
     浮腫、弛緩、椎間腔の狭小化が起きて腰痛が発症し、更には坐骨
     神経痛をも発症する

     前屈・後屈・側屈・回旋の総てが困難で、特に後屈で痛みが増強
     痛みは椎間関節部に限局する
  • 4
    筋・筋膜性腰痛
     疼痛部の皮膚神経が筋膜を通過する部分で屈折または索引されて
     いて、または皮膚神経部に血管から浸潤があり疼痛を生む

     発症は腰をねじりながら伸展する時に突発的に起こる事が多い
     発作時には腰全体に痛むが、圧痛は筋肉部に現れ、上体は患側に
     傾き、運動の制限がある
     安静で疼痛が軽減すると疼痛部位は限局され患側の腰筋は緊張し
     圧痛はL2・L3現れ、前屈が困難だが伸展時には痛みが無いのが
     特徴である
     極限する圧痛と硬結、強烈な腰痛、歩行傷害と疼痛、安静時に軽減
     脊椎に側弯症状、前屈困難、圧痛点と硬結
  • 5
    椎間板変性
     椎間板を構成する髄核の濃縮、繊維輪の断裂、または硝子様軟骨板
     の断裂が成分の変性によって起こり、滑らかな運動が不規則にな  り、その結果過度の屈曲と伸展が生じ、前後方向にある程度のす  べり運動が起こるため
    に、異常運動による挫傷や小さな骨棘も生
     じて、後方関節亜脱臼や骨軟骨骨折が生じる事もある
     椎間板変性は無症状の事もあるが、疼痛が現れる事もある
     安静で横になっている時は痛み無し、運動時・労働時に傷み
     慢性化、脊椎の上(棘突起上)に極限
     
  • 椎骨粗鬆症
     加齢に伴い椎骨成分の添加と吸収のバランスが崩れ、吸収機能が高
     まって骨粗鬆化が生じ、骨皮質は薄く海綿骨骨梁も減少し、脆く
     わずかな外力でも圧迫骨折が起こりやすくなる

     脊柱の後弯(老人性円背)を生じ、身長が減少、背筋が萎縮し緊張  し伸展しにくくなり、疼痛が現れる
  • 脊椎分離症
     椎体を主とする前部と、椎弓、棘突起を主とする後部が分離した  もので、第5腰椎に好発し先天的要因と繰り返される外力により
     発症すると考えられる

     無症状の場合もあるが、重苦しい、だるい等の鈍痛があり、前弯  の増強、腰筋の緊張、圧痛が現れる
  • 脊椎すべり症
     脊椎分離部で椎体が下位椎体に対して前方にずれた状態にある事  を呼び、先天性、分離性、外傷性、無分離性などがある
     腰椎棘突起の階段変形,前弯増強、脊柱筋の緊張があり、腰痛、
     坐骨神経痛を生じる
  • スプラング・バック(棘上靭帯・棘間靭帯の損傷)
     急性発症、下位腰椎正中に疼痛、時に殿部・大腿部・下腿部に疼  痛が放散する事もある
     圧迫骨折(T12~L1に好発)とは発症部位が異なるが、閉経後女性  では見極めが必要であるが、筋力を必要とするスポーツ選手にみ  られるが一般には発症頻度は希

現代医学の鍼灸治療

腰痛の基本的治療

腰痛治療の分類

腎兪・志室付近の疼痛箇所をⅠ型大腸兪・関元兪付近の疼痛箇所をⅡ型

合併した疼痛箇所はⅢ型と分類して基本治療を行う

  医道の日本社 最新鍼灸治療学(医学博士 木下晴都著書)より

坐骨神経痛の検査及び圧痛点

主な坐骨神経痛を鑑別テスト

1.下肢伸展挙上テスト(SLR)         

仰臥位で膝を伸展したまま下肢をゆっくり挙上し、疼痛や痺れの発現を検査    (70°以上挙上で発現は陽性)

2.ブラガード・サイン(SLR増強法)      

SLRテストで陽性になった位置から、膝を伸展したまま足関節を背屈し、疼   痛や痺れが増強すれば陽性

3.ラセーグ兆候(坐骨神経伸展テスト)     

仰臥位で股関節と膝関節90°屈曲位で他動的に膝関節を伸展し、下肢後面に   疼痛と伸展不能で陽性

4.ボンネト・テスト(坐骨神経伸展増強テスト)               SLRテストで疼痛を誘発した後に、下肢を少し上げて股関節を内転さ   せ、下肢に疼痛が出現すれば陽性

坐骨神経痛の圧痛点

骨盤を形成している腸骨・坐骨・仙骨を強く連結させる仙棘靭帯で坐骨  孔が上の大坐骨孔と下の小坐骨孔に分けられ、大坐骨孔を梨状筋が上孔  と下孔に分ける、その下の孔から坐骨神経が通る箇所に一つ、大腿部後  面の坐骨神経が通る箇所に一つ、坐骨神経から分かれる脛骨神経が通る  箇所に一つと、圧痛が大きく現れる点がある

 

腰痛Ⅰ型の治療

気海兪・志室・下志室・復溜、ときには外胞肓・衝門・気衝・帯脈をも取穴する

回旋困難を訴える場合は、陽明経病症として、足三里・上巨虚・下巨虚も用いる

腰殿部の刺鍼は内下方に向けて斜刺で約20mm刺入、下肢は直刺で約10mm刺入し、虚証体質には軽い刺激の手技を、実症体質にはやや強めの手技を加える

衝門・気衝・帯脈に圧痛があれば、軽い単刺を加える

腰痛Ⅱ型の治療

関元兪・腰宜・上胞肓・外丘、ときには上髎・腰陽関を加え、手技はⅠ型と同様に行い、上髎と腰陽関は圧痛がある場合に用いる

腰陽関に圧痛がなく、その一椎下のL5とS1の間に圧痛がある場合には、十七椎を用いる

腰の屈伸困難を訴える場合は小陽経病症として、外丘を加えて、腰部の過緊張を訴える腰痛は蕨陰経病症として、蠡溝を用いる

腰痛Ⅲ型の治療

気海兪・関元兪・委中、ときには志室・腰宜

このタイプはしばしば老人に現れ、手技は軽度の刺激として、気海兪・関元兪に圧痛が顕著な時には灸を選ぶ

項背部から腰仙部の広範囲に痛みを訴える腰痛は太陽経病症として委中穴を選択し刺鍼を行い、発熱と突っ張った痛みを訴える腰痛は太陰経病症として地機穴を選択して刺鍼を行う

坐骨神経痛  原因は、腰椎椎間板ヘルニアからの起因が最も多い

坐骨神経痛で自発痛や圧痛部が何処に出現するかに於いて、大きく四つのタイプに分類が出来る    (医道の日本社 最新鍼灸治療学 木下晴都著書より)

(1)後側型 下の写真で背部から殿部・ふくらはぎに自発痛や圧痛点がある

(2)前側型 後側型と同時に下腿前面に自発痛や圧痛がある

(3)外側型 後側型と同時に下腿外面に自発痛や圧痛がある

(4)総合型 総ての側に時発痛と圧痛が出現する

坐骨神経痛治療の傍神経刺 患側の大腸兪・殿圧

大腸兪は腰神経が大腰筋の下を通る(深部)が、この筋の過緊張と引きつりから腰神経の圧迫を取り除く目的に用いる

殿圧は坐骨神経の上を梨状筋が被っていて、筋緊張から坐骨神経と下殿動脈を圧迫するので疼痛を発症すると考え、この筋緊張を取り除く目的で用いる 

傍神経刺以外の置鍼する治療点

腎兪・上胞肓・殷門・外承筋・足三里 健側大腸兪

患側を上にし股関節と膝関節を少々屈曲姿勢で、腰殿部は1.5~2cm、下肢は1~1.5cm刺鍼して15分間の置鍼

健側大腸兪は単刺とする

疾患別治療法

椎間関節捻挫の治療

伏臥位か、体位が取れない場合には側臥位(患側を上)で行う

基本治療穴から治療穴を選択して、必要に応じて、奇穴の殿圧、十七椎、痞根、を加えて刺鍼を行う。

急性の筋・筋膜痛

伏臥位または体位が取れない場合には側臥位で、圧痛点周辺を囲む様に斜刺で十五分間置鍼し、後に圧痛点の反体側に深刺で手技を加える。

その後に、疼痛部位に灸も可。

慢性の筋・筋膜腰痛

伏臥位又は患側を上にした側臥位で、基本的治療穴から選択し脊椎方向に斜刺を行い、

患側圧痛部に直刺、圧痛点周辺を囲んで斜刺

十五分間置鍼し、灸も可

東洋医学の鍼灸治療

腰痛は「腰脊痛」とも言われ、腰部の疼痛を主症とする病症であり、腰部の一側起こる場合と、両側に起こる場合がある

腰は「腎の府」と言われており、足小陰腎経の経脈の循行は「脊を貫き腎に属している」ので、本病症と腎とは密接な関係にある

本病症には急性の病症と、慢性の病症があり、外邪や外傷による急性腰痛は実証が多く、経過が長く反復して起こる慢性腰痛は腎虚による事が多い

病因病機

腰は腎の精気が注いでいる処であり、腎と膀胱とは互いに表裏の関係

腰は足太陽膀胱経が走行して、任脈・督脈・衝脈・帯脈が分布している処でもある

内傷性の腰痛は腎虚労損の場合が多く外傷性の腰痛は風・寒・湿の外邪による場合が多い

また、捻挫などでは外傷による経脈の循行が悪くなり腰痛を引き起こす場合もある

寒湿による腰痛(痺証型)

湿気の多い所に居住したり、雨に当たった後や、汗をかいて後に風に当たったりすると寒湿の邪を受けやすい

寒邪は凝滞性や収引性があり、湿邪には粘滞性があり、この寒邪と湿邪が結びついて、腰部の経絡に影響を及ぼして気が阻滞して腰痛が起こる

症状 腰部の重だるさ、冷え、疼痛、寒冷刺激や悪天候で増悪する
   少し動くと軽減し、静止時間が長いと強ばり出現する
   温めると軽減舌苔白脈沈遅緊

足の太陽膀胱系型(脛骨神経)  下腿後部に放散痛

 治療穴  腎兪、大腸兪、環跳、委中、崑崙、腰陽関、次髎を用いて       温通経絡・散寒止痛を行う

足の小陽胆経型(腓骨神経)   下腿外側に放散痛

 治療穴  大腸兪、環跳、風市、陽陵泉、飛陽、腰眼、侠脊穴用い       て温通経絡・散寒止痛を行う

腎虚による腰痛

房事過多や久病などで身体が弱ったり、老化により腎虚となり腎精が不足すると経脈を滋養出来なくなり腰痛を発症する

症状 発病が緩慢で慢性的症状、鈍い痛み(隠痛)、腰部・足の無力感、    四肢末端の冷え、精力減退、膝のだるさと痛みが随伴、過労     で増悪喜按
   陰虚~小便黄、不眠手足心熱、舌質紅・少苔脈弦細数、口       や咽頭の渇き
   
陽虚~精神疲労、腰部の冷え、小便清、舌質淡、舌苔薄白、
      脈沈細弱 

治療穴  腎兪、委中、次髎、大腸兪、環跳で補益腎精・通路止痛

     陰虚~太谿、志室、照海、にも刺鍼

     陽虚~命門、腰眼、復溜、にも刺鍼

血瘀による腰痛

捻挫や打撲などの外傷により腰部の経絡・経筋を損傷して瘀血が擬滞して腰痛が発症する

症状 腰部強ばり刺痛、固定性の疼痛夜間に増強、局所筋の緊張と    圧痛、膝窩に絡脈・血腫が出来る、拒按、顕著な圧痛点、

治療穴 腎兪、委中、環跳、大腸兪、腰陽関、阿是穴で行気活血・舒筋     通路をはかる

    予備穴に支溝、陽陵泉、次髎、侠脊穴

オステオパシー&整体

症状出現は構造、内臓、中枢のどれから起こっているか

立位視線テストを行なって、構造からの体性内臓反射が起こっているのか、内臓からの内臓体性反射が起こっているのか、又は自律神経のバランス不調から起こっている症状か、三種類の何処から症状が起こっているかを特定していく事が必要になります。

構造の場合には椎骨からか、又は仙骨からかの特定をしてから、治療法を選定します。

内臓の場合には内臓腔テストを行ない目的箇所を絞り込んでいきます。

中枢神経系の場合には仙骨と仙骨の動きの確認して、脳脊髄液の循環作用の確認が必要になります。

構造に問題があった場合

  • 1
    仙腸関節に問題がある場合
     関節周囲の軟部組織をリリースす
  • 2
    それでも痛みやがある場合
    筋肉のリリース 
  • 3
    痛みや痺れが残る場合には
     神経ブロックのリリース

内臓に問題があった場合

内臓腹腔検査で頸部、胸部、腹部、骨盤の各腹腔検査を行う

中枢神経系に問題があった場合

頭蓋仙骨の機能検査を行って、それぞれの機能制限が認められる箇所の改善法を行う

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その他の症例

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