妊娠とは受精卵の着床から、胎児及びその付属物が母体外へ出される (分娩)迄を言い、受精は排卵から24時間以内に起こり、受精した卵すなわち胚は卵割を開始し、卵管を進みながら分裂を繰り返して胞胚となり、受精から6~7日で子宮粘膜に着床して妊娠が成立します。
早期妊娠中毒症は妊娠流涎と妊娠悪阻があり、一般的に”つわり”と呼んでいますが、不意に訪れる「具合の悪い」状態が、妊娠の為と気がつかずに風邪を引いたと勘違いをして内科検診を受けることがあります。
”つわり”は妊婦の60%以上におとずれて、妊娠5~6週頃に始まり、 12~16週ぐらいで自然に軽快していきます。
妊娠後4週目頃に胎盤からヒト絨毛性ゴナドトロビンという性腺刺激ホルモンが分泌され、このホルモンが嘔吐中枢を刺激すると”つわり”が起こるとされ、また妊娠における情緒障害、不安感による心理的要因や自律神経失調などからも”つわり”が起こると想定されています。
妊娠中毒症の成因は明らかではないが、妊娠流涎からはじまり、妊娠悪阻第1期、妊娠悪阻第2期、妊娠悪阻第3期まであるとされ、頑固な嘔吐を現す”つわり”は0.5%以下とされていて、早期の鍼灸治療で妊娠悪阻第3期まで進まないよう効果が期待される。
◎妊娠流涎
妊娠初期の2ヶ月頃に唾液の分泌が異常に亢進された状態で、極めて 多くの唾液が分泌され、しばしば妊娠悪阻の前駆症状となり、飲食物 に対する指向変化が現れて、酸味を好む様になります。
◎妊娠悪阻第1期
妊娠2ヶ月半頃から、慢性的な嘔吐を主徴する症状となり、一般的 な”つわり”となります 悪心が嘔吐となり、夜間の空腹時または食後にみられて、食欲低下が 長期期間では全身の栄養も低下する。臭いに敏感になり、炊飯時の 臭いが耐えられなく、神経質にも成るが胎児は正常に保たれます。
◎妊娠悪阻第2期
嘔吐が第1期より激しくなり、飲食に関係なく頻繁に嘔吐を繰り返す。 口臭も伴い、胃痛があり、食欲は衰えて体重も減少してきて、神経過 敏で時には憂鬱となり、便秘、尿量減少、尿蛋白の出現を見ることも あるが、鍼灸治療で症状の改善も見られる。
◎妊娠悪阻第3期
脳の症状が現れて、眩暈、耳鳴、幻覚、幻聴、昏睡が現れる様になる と入院治療が必要となる。
つわり”は急激な体重減少として1ヶ月で数キログラム以上体重が減少して、体力の低下と栄養不良状態となり、更に嘔吐に依って体内の水分が不足して、脱水状態となり、水分を摂取しても摂取した以上に嘔吐を繰り返すので、重症時には点滴治療が必要となります。
また、精神的安静と肉体的安静が必要となり、パートナーや親・親戚の理解も必要となります。
つわり時期には分泌されるホルモンの一つのプロゲステロンの影響でひたすらと眠くなりますが、周囲の理解がとても大事な時期と言えます。
つわりは妊娠初期の妊婦の約50~60%に起こる辛い症状ですが、妊婦にとっては胎児に悪影響を及ぼさないかと、薬物治療に対する心理的抵抗感が根強く、鍼灸治療が有効かつ安心して行える非薬物療法として認識されています。
<治療穴>
肺兪、脾兪、胃兪、膻中、中脘、内関、陰谷、復溜、腎兪、曲沢、風池、蕨陰兪
東洋医学に於ける妊娠2~3ヶ月前後にみられる悪心・嘔吐と心中煩悶などの症状を「妊娠悪阻」と言い、主な病理機序は胃気不降で、降りなければんらない胃気が上逆などで起こるとされています。
妊婦は胎児を宿している腹部への刺鍼は、不安感や恐怖感を抱きやすいので、極力腹部への刺鍼は避けて、背部や手足の経穴を用いた、臓腑経絡的治療法を行うと良い。